あけましておめでとうございます。受講生の皆様、講師の皆様、地域の皆様、そして日頃A´ワーク創造館がお世話になっている皆様に心から新年のお慶びを申し上げます。
さて今回の「館長の部屋」は、昨年12月9日に開いた勉強会「アメリカの就労支援と職業訓練」(講師:筒井美紀法政大学准教授)からその概要を報告いたします。
今、なぜアメリカかということですが、「今のアメリカを見ると10年後の日本がわかる」といわれます。競争と格差が激しいアメリカですが、それを補うセーフティネットや再チャレンジの仕組みに学ぶ点が多いからです。
2013年7月、アメリカでは「労働力革新機会法」が成立しました。そこには、「公的支出は、就労に不利な人へなされるべきであって、企業のさらなる利潤獲得のための職業訓練に使われてはならない」という原則がうたわれています。「就労に不利な人」とは、失業者、無業者、非正規雇用の人たちを指します。
各地域では雇用主が過半数を占める労働力投資委員会(WIB。ミシガン州では25の地域)が組織され、リアルな職場体験ができるOJTを増やしており、OJT適格雇用主には75%を上限に賃金補填がなされるといいます。
また、アメリカの雇用の実情は高卒では苦しいが、大学では学力不足等の理由でドロップアウトする人の割合が相当高いそうです。そこで注目されているのがコミュニティ・カレッジ(C.C.)です。C.C.は2年制の地域公立短期大学で、全国に約1200あります(連邦補助金、州補助金、地域の財産税や寄付金、学費収入で運営)。卒業すると準学士の称号が得られ、4年制大学への編入も可能になります。また、地元企業のニーズに応じて柔軟にカリキュラムが編成される資格認定コースがあり、一定の職業能力を有することを証明する資格認定証が発行されています。
アメリカの労働力(25歳以上、2013年)の学歴構成は、高卒28%、Some college(大学でいくつか単位を取った人)、準学士8%、学士18%ですが、今後、Some collegeや準学士を増やす方針で、連邦労働省は全国のC.C. の職業訓練プログラムに年平均500万ドルを拠出しています。
私たちの目標はアメリカのC.C.が果たしている機能を、自治体や就労支援機関、教育機関、企業、NPO等と協力して、この日本で実現することです。現在、日本でも非正規雇用が急速に増え、労働市場が流動化している状況があります。しかし、その一方で、セーフティネットや就労支援・職業訓練等再チャレンジの仕組みはけっして十分とはいえません。また、今後労働力人口が減少して、地域の中小企業の人材不足がますます深刻になることが予想されています。社会・地域ぐるみで人を育てることが問われる時代になるのではないでしょうか。
A´ワーク創造館はもともと国が全国82か所に設立した地域職業訓練センターの一つです。「中小企業で働く人や求職者の人たちに生涯にわたって職業教育の機会を提供する」という設立の意義は今日ますます重要になるものと確信しています。
刻々と変化する産業と雇用環境にしっかりアンテナを張り、働く人、働きたい人に寄り添いながら、そして地域の企業様にお役に立てるようスタッフ一同がんばってまいります。皆様の温かいご支援をお願いいたします。