「仕事」ということについて

 先日、テレビで歌手の一青窈さんが対談をしていて、「最近、レジ打ちをしている若い人を見ると手が遅くなっているように感じる。私は5倍ぐらいのスピードでやっていたように思うんだけど。なんだかマニュアルを気にして失敗を恐れているような感じ…」と言っていました。さりげない言葉でしたが、私は大切なことを指摘していると思いました。

 皆さんは「あなたの仕事は何ですか?」と尋ねられたら、なんとお答えになるでしょうか。私は一青窈さんが言う若い人は、きっと「レジ打ち」と答えるだろうと思うのです。もちろん、それは間違いではありません。しかし、「レジ打ち」というのは単なる作業です。その作業をマニュアル通りやることでお金をもらっているのだと考えると、面白くもなんともありませんし、会社も従業員にそんなことを望んでいるわけではないと思います。

 でも、「レジでお客様のおもてなしをしています」と、目をお客様に向けるとどうでしょう。買物をしていただいたお客様に感謝の言葉を伝え、お待たせしないようスピーディに精算を済ませ、笑顔でお送りすることによって、「またこのお店で買おう」というファンを作り出すことができます。それを仕事だと考えれば、楽しさや誇りを感じるはずです。そして、もっと喜んでいただくために自ずと技術に対しても向上心が生まれてくるのではないでしょうか。

 私は、若い頃、自動車や家電製品の部品製造会社に勤めていましたが、私の上司はいつも「今、お前が作っている部品はやがて冷蔵庫やポットになって百貨店に並び、全国の家庭に届けられるのだぞ。この製品を使ってくれる人の満足する顔を思い浮かべて仕事しろ」と言っていました。実際、自分が苦労して作った新製品が百貨店に並ぶとその部品を見ながら、とても嬉しい気持ちになったものです。

 A´ワーク創造館が提供するすべての講座においても、そういった「仕事」についての考え方を取り入れて提供するよう努めております。例えば、パソコン系講座の先生方は皆、「パソコンは仕事をするためのツールにすぎない」と、パソコンスキルを実際の職場で活かすための実践的な指導を心掛けておられますし、公共職業訓練の受講生の皆さんが再就職をめざして、ジョブカードを作成される場合や、キャリアプランを考えられる場合にも、キャリアコンサルティングを通じて、その点を意識した支援をさせていただいております。

 「仕事」というのは、人と人との関係の中に生じます。つまり、お客様に何を提供しているのかということです。私たちは、自分がお客様や社会にどう役立っているかを知ることによって、幸せを感じることができるのだと思います。

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